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ちょっとネトゲの自キャラをこっそり。
樹下の都。
街の中央にある巨大な木の上で、私は弟と杯を交わした。
「おめでとう」
明日、私の弟は精霊の彼女と結婚する事になった。
それはもう、私も驚きを隠せなくて。まさか世界に向けて告白されるとは思いもしなかった。
こんなにも早く、巣立っていくものとは私も鳩も予想していなかった。
「ねーちゃんも早く旦那見つけろよ。家庭っていいよ」
「馬鹿ね。そんな簡単に見つかるものだったらもう結婚してるわよ」
私は何処にも所属していない……即ち野良エルフだ。
野良はこの世界で知人と出会わない限り基本的にコミュニケーションが無い。
それに私自身、温厚しか取り得の無い性格で、鳩のようにインパクトに富んでいる訳でもない。
「私はもう行き遅れだからいいのよ」
60にもなって結婚など、夢のまた夢にしか思えないようになってきた。
私は愛情よりも友情を取ろう。そうとすら考えている。
「私の事より自分の事を心配なさい。明日の準備は大丈夫なの?」
「い、一応出来る限りの準備はしたよ」
「鳩はどこか抜けてるから、お姉ちゃん心配よ」
思わず溜息。
今でも初心者Gに所属し、それでいて毎日弄られて泣かされているのだから心配にもなる。
「酷ッ!そんな事言ったらねーちゃんだってそうだろ!?」
「ええ、そうね」
私は杯に入った飲料を口にし、肯定する。
あっさり肯定されてしまった事に反論の糸口を掴めない鳩は不貞腐れてそっぽ向いてしまった。
兄弟なんだから似ている所の一つや二つあるだろう。いや、兄弟だからこそ互いの長短が垣間見えるのだ。
「……幸せになりなさいね。鳩」
思わず零れたのは、飲料ではなく言葉。
その言葉に鳩はハッとして私を見る。鳩は驚愕のような、それでいて寂しいような表情を浮かべていた。
元々、鳩は初心者Gに紛れ込み、且つ私の荷物番の為に生まれた子だった。
永遠に初心者Gに居させようと思っていたのに、いつしか鳩はムードメイカー的な存在になっていた。
私の弟なのに、私よりも大きな存在になっていた。
それは誇らしくもあり、少し寂しいような感情。
「ねーちゃん……」
「いいのよ。私は望んで一人になったんだから」
俯いていた顔を挙げ、満面の笑みを浮かべる。
明日には晴れて新郎となるのに、不肖の姉の事で心配させるわけにもいかない。
「そんな事より、問題は鳩に預けてある私の道具一式よねぇ……」
「あー……そういえば」
「鳩も30になったし、また初心者Gに入る用の子が生まれそうね」
先に結婚された事に妬みは一切無い。
あるのはただ驚きと嬉しさだけ。
お幸せに。