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土壇場ネタ帳。 一次も有れば二次も有。
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魔道事務所の日常。
やっぱ携帯打ちは疲れる´A`
 


朝一番。
俺の部屋に目覚まし時計のベルが鳴り響く頃。
本来なら寝ぼけ眼でベルを止め、欠伸でもしながらゆっくり起きる。
だが。

「ッ!?」

俺はベルが鳴るより数拍前に目を覚まし、眼前の状況を確認するよりも早くベッドから飛び退く。
丁度ベルが鳴り響き始めた時、今まで俺がいた場所……つまりベッド上に大量の書類が落ちて来た。

念のため言うが、俺の部屋には雪崩が起きる程の紙切れなんてない。
俺は事務仕事が苦手であっても、仕事を溜め込むような真似はしない。
もしあるとすれば閑凪の部屋だ。

「……」

目前には大量の紙で埋まった俺の寝床。
天井には見慣れぬというか、昨晩まではなかったはずの木板が糸でぶら下げられている。
四隅に糸の端が見えるが、手前二本は切れていた。恐らくあの板にこの大量の紙切れが乗っていたのだろう。

朝一から仕掛けられたこの悪戯。
犯人なんて一人しかいねェ。

俺はさっさと身なりを整えてジャケットを羽織り、自室を後にした。
向かう先は事務所と兼用になっているリビングだ。

「おはよう紅煉」

まず声をかけてきたのはイリス。朝食の準備をしていたらしく手にはパンの詰まったバスケットを持っていた。
その後ろにいるレイヴンはと言うとありえねェくらい大量の皿を手にしていた。
勿論料理が乗っている状態で、だ。無表情で両手どころか腕や肩、頭にまで乗せている辺り相変わらず奇妙だ。

「やぁ紅煉。目覚めはどうかな?」

そう言ったのは、席に着いて新聞片手に珈琲を啜っている閑凪だった。
嫌味な程爽やかな笑顔で何をいけしゃあしゃあと。

「ああ。引っ掛からないで済んだからな」
「……避けられちゃったか」
「残念そうに言うんじゃねェよ残念そうに」

俺の咎めなど気にもせずに詰まらないなと呟き、カップを置く閑凪。
恐らく仕掛けを作ったのは寝静まった頃だろう。糸程度なら遠くにいても閑凪の風魔法で切れるしな。

しかし寝ていたとはいえ全然気付かなかった。元諜報部エースの名は伊達じゃない、か。
本気になった閑凪の気配はこの俺でさえ察知する事が困難だ。

「で、アレは何の書類……」

--ギャーーーー!!

閑凪に問おうとした時、事務所の奥……丁度流牙の部屋から叫び声が聞こえた。
声の主が流牙である事は間違いない。

「……何の書類使ったんだよ?」
「流牙の事、心配しないの?」
「どーせお前の仕業だろーが」

証拠にとでも言わんばかりに閑凪は小さく舌打ちしていた。
閑凪の悪戯は今に始まった事じゃない。
更に言うなら閑凪の餌食になりやすいのは主に流牙だ。俺は相当不意を突かれたりしない限りヘマはしない。

そりゃあ帝国から逃げて来たばかり……つまりこの事務所を立ち上げたばかりの頃は多少心配して様子を見に行ったりもしたがな。
だが様子見に行って扉を開けた途端フライパンが飛んで来たり床が抜けたりと芋蔓式に引っ掛かる事が何度もあった為、閑凪が悪戯を仕掛けていると分かった時は迂闊に動かないようにしている。

「ああ、あの書類は一枚除いて先月終わらせた仕事の資料だよ」

それを聞いて納得した。
閑凪が請け負う仕事は半分以上が情報に関する事だ。
依頼主に提出するのは数枚の紙切れだが、それはあくまでも調べた内容を纏めた物であって実際の内容は数十、数百枚にも及ぶ。
何かと面倒臭がって俺に所長代理をさせたりしやがるが、その完璧とも言える仕事は多くの依頼主が信頼している。
一枚以外が先月の、と言う事はどうせ焼却処分……

「……ちょっと待て。残り一枚は何だ」

ふと嫌な予感が過ぎる。
閑凪は爽やかな笑顔を浮かべたままだ。
その裏はあるか否か。いや、否であってほしい。

「うーん、確かギルド登録証の更新とか書いてあったかな」
「バ……ッよりにもよってそれか!!」

死刑宣告かと聞きたくなるような内容だった。
つーかギルド証更新って俺の、しかも締切今日までのヤツじゃねーかよ!

元凶たる閑凪に悪態をつくのもそこそこに、俺は更新用紙を探し……いや、発掘しに自室へ駆け出した。


**


閑凪にまた何かされたのか、バタバタと駆けていく紅煉。
またかと言う半分呆れ始めた気分で見送った。
私が此処に来てから何度も見た光景。流石慣れてしまった。

二人と比べたら私は最も被害が少ない。
閑凪曰く面白くないからと言っていたけれど、多分理由はもう一つ。

「ありがとう」

手にしていた料理を全てテーブルに置いて来たレイヴンが戻って来た。
お礼を言っても反応らしい反応はない。ただ無言で頷いて壁際に移動する。

私の側にはいつもレイヴンがいる。
流石の閑凪でもレイヴンにだけはあまり出過ぎた真似はできないようで、私が被害に会わないのはレイヴンの庇護があってこそなの。

その閑凪はと言うと少し嬉しそうな表情で珈琲を啜り、おもむろに新聞をテーブルに置くと手を掲げた。
掲げた指先で風が巻き起こったかと思うと、音もなく紅煉が駆け出した方へ流れて行く。
……数秒後。

――だあぁぁぁぁーーッ!?
――うわっ!?ぐ、紅煉ーッ!!

奥から紅煉と流牙の声が聞こえて来た。
更に何か転んだような音も聞こえ、事務所全体が揺れた。

「……」
「いやー、今日も素晴らしい朝だね」

ちなみに閑凪の機嫌は、彼の仕掛けた悪戯がいくつ成功したかによる。
冷や汗を垂らす私を他所に閑凪は満面の笑みを浮かべていた。

「……か、閑凪?一体何を仕掛けたの?」

恐る恐る聞いてみる。
彼はにいっと口の端を吊り上げ、一言。

「聞きたい?」

背後の何か黒いモノと一緒に意味ありげに言うから、思わず辞退した。
とりあえず、今の風で悪戯と言うか罠を起動させたのは間違いないと思う。


数分後、あちこちに擦り傷を作った紅煉と顔を赤く腫らせた流牙がもの凄い勢いで戻って来たのは言うまでもない。
それでも何だかんだと言って言いくるめたり流させて閑凪は回避してしまう。

許せてしまうのはそれが毎度の事という諦めなのか、例え悪戯が激しくても信頼出来る仲間だからと言うかは……私でもわからない。

「あっはははは。だってキミ達が一番やり甲斐があるんだもん」
「テメ……人が黙ってりゃいい気になりやがって!」
「そーだよ閑凪ッ!流石のオレでも怒るよ!?」

………仲間だから、って事にしておきたい。



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鴉羽 らいと
性別:
非公開
自己紹介:
絵も描ける物書きになりたいともがいてる奴。
仕事もそっちのけで日々創作。

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土壇場作成故、話の流れ、繋がりなど全く持って皆無です。
誤字脱字多いかと思われますが広い心でスルーしてやって下さい。
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