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土壇場ネタ帳。 一次も有れば二次も有。
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コレ書いてて思ったこと。どこの変態だ。

多少過剰すぎたかとも思うのですが、このくらいあった方が面白いよね!と無謀な決行。
オカン的な行動起こす過保護キャラかな。閑凪の前限定で。

ちゃんとスッピーやヴィランやメレイアの前では至って普通の黒いオニイサンですよ?
閑凪の話題が絡まなければ



 


季節の初め。
閑凪の魔道事務所に所属する俺たちに仕事が言い渡される日だ。

「じゃあ、今月分の仕事を発表するよー」

窓の前にあるデカイ木製の事務机に座ったまま、閑凪は書類を幾つか取り出す。
流牙とイリスは机の傍に立っていた。ちなみにレイヴンは勿論イリスの直ぐ後ろだ。
俺は本棚に寄りかかって発表を待つ。

季節の初めになるとこうして全員が集まり、閑凪からひと季節分の大まかな仕事内容が教えられる。
期限が決められているのなら率先して行うが、大半は季節が終わるまでにやってくれればいいようなものばかりだ。なので優先順位などは特になく、各自の好きな日、好きなペースで進められる。
ま、勿論途中で入る依頼もあるから、あくまでもこれは目安だ。
逆に俺なんてとっとと依頼を終わらせて趣味の魔物狩りに出かけるくらいだがな。

「紅煉は火炎馬のたてがみ入手に、共和国国境近辺に出没する盗賊の討伐、それからギルドからの依頼をいくつかだね。」
「また盗賊かよ……。ま、火炎馬相手に出来るのを考えて我慢すっか」
「盗賊の件は今日から三週間以内に行う事。被害が結構あるみたいだから迅速にと指示が来てるよ」

盗賊なんてモン、日々魔物相手に武器を振るう俺にとっちゃ朝飯前だ。
自信満々に鼻で笑い飛ばしてやると、閑凪はにこりと微笑んだ。

「余裕過ぎて欠伸が出るくらいなんだろうから適当にあしらったっていいけれど、周囲が被害甚大だとか過度すぎる殺人はやめてほしいね」
「ぐ……」
「前回の盗賊討伐の時なんて大変だったんだよ?せめて顔くらい分かる程度にしておくこと」

そりゃあ、あの時は悪かったとは思うけどよ。
タダでさえムカついていた時に行った盗賊討伐は俺に被害があった訳ではなく周囲に被害があった。
半径500m近くが焼け野原。勿論盗賊の大多数は大火傷によって病院搬送され、その半分は元の顔が分からないほど消し炭にされていた。

あの後、隠蔽するの大変だったんだからね。
閑凪はそうぼやくと続けてイリス、流牙と仕事内容を伝えた。

ん?レイヴンには仕事ないのかって?
アイツはいいんだよ。まず仕事中のイリスを護衛しないとだし、第一イリスの言う事しか聞かないんだから仕事受けてもやらねェ事が多いからな。

「……以上。各自期限には注意して取り組むように」
「はーい」

書類を机の上に置き、最後にいつもの決まり文句。
いつもは悪戯やら上げ足やらで罵るが、こういう時だけは閑凪が所長だと思えてしまう。

さて、じゃあ俺は一番面倒臭い盗賊から最初に行くか。
そう思いつつ伸びを一つすると、外から少しだけ魔力を感じ取った。

「流牙」
「うん。外に同族がいる」

魔力や気配の察知に関しては俺よりも流牙のほうに利がある。
そのため、これは気のせいではなく間違いなく近くに魔力を持った者がいると確信する。

俺達が魔力に敏感でなければならない理由。それは帝国を抜けた脱走兵であるから。
翼人種の他にも魔力を操る種族や連中はいるが、同族の魔力だけはどんだけガキでも感知できる。
事実、この中で一番鈍感なイリスでさえ何かが近付いてきていると察しているようだ。
レイヴンなんかに至っては表情こそそのままだが、気を抜いてはいない。

「また帝国兵、かな?」
「さあな。何であっても……」

警戒はしておいた方がいい。
そう言おうとした俺の視界に入ったのは、窓ガラスの向こうにある向かいの建物。
その真上に現れたのは翼を持った人の影。

「閑凪!後ろだ!」

閑凪が振り向いたのが早いか、人影が動いたのが早いかは定かじゃない。
その翼人種は急降下してきたかと思うと事務所の窓をブチ破ってきやがった。

硝子片が飛び散り、前に出てイリスを庇うレイヴン。
だが閑凪はもろに硝子片を被った……かと思いきや、乱入して来た翼人種は閑凪を抱え上げ、俺と流牙の脇をすり抜けてソファへと降り立った。
翼は一般のと比べると大きめだ。イコール相当の魔力量を持った相手であると言う事。

「……ナギ」

深緑の翼が音もなく消え、翼で隠れていたそいつの姿が露になる。
緑のロングマフラーに旅人がよく使う皮製のコート。
そして極めつけはその押し倒されているウチの所長と同じ髪と瞳の色。

「げ、ゲイル兄さ……」
「ああああ会いたかったよオレのナギいいいいっ!トモダチとは仲良くしてるか?ご飯はちゃんと食べてるか?いや寧ろナギすこし縮んだんじゃないかウエストも細くなったみたいだし身長だってこの前あった時よりも0.05ミリくらい小さがふぉ」

俺より力ねーけど、恐らく閑凪にとって渾身の力を込めたアッパーが奴の顎目掛けて放たれた。
力はないがスピードだけはある閑凪だ。
やたら景気いい音がしたが、威力がなくてはゲイルは止まらない。

「……流牙」
「……うん」

この弟煩悩のゲイルが来た時は決まって俺と流牙が動くしかない。
もうこの光景も慣れてしまったため、お互いやる事は把握しきっている。

立ち振る舞いも忘れて心底嫌がる閑凪を見るのは実に滑稽なんだが、ゲイルは放置しておくとずっとこのままだ。
普段の仕返しの意も込めて長時間放置してみた事もあったが、ゲイルが去った後もしばらくの間閑凪の背後から般若が消えなかった。

「さーおにーさんちょっと落ち着こうか」
「うわっ!?ちょ、君達何するの!オレとナギを引き裂こうだなんて天も俺も許さないよ!?」
「ひ、引き裂く訳じゃなくてちょっと退いてもらいたかっただけなんですけど……」
「ああああ!ナギいいいいいいいいいい!!」

流牙が羽交い絞めにし、俺が閑凪から手を放させる。
手足をばたつかせて抵抗しまくり、挙句の果てに魔法で風を起こそうとするので俺が全力で阻止。
ゲイルが退いたため、ようやく身を起こす事が出来た閑凪は身なりを整えながら「殺るなら僕のこの手で万に引き裂く」などと怖い顔で言っていた。

「ちょっと、これ以上オレとナギの邪魔するなら黙ってないよ!」
「わぷっ!?」

まずい。そう思った時には遅かった。
ゲイルは再び翼を具現化させると、流牙の顔を翼で思いっきり叩いた。
叩かれた事で流牙が怯んでしまった隙にゲイルは流牙の腕から抜け出し、まだソファの上にいる閑凪にロックオン。
次の行動に移される前に俺はゲイルの腰目掛けて体当たりをかまして床に転がし、上にのし上がった。

「くっ……そうは行くか!」

常人相手ならならこれでケリがつくが、今回は相手が悪すぎる。
ゲイルは魔法で突風を起こし、俺を壁際まで吹き飛ばした。
思っていた以上に威力が強かったらしく、背中を打ちつけた時少し息が止まった。

この兄弟、お互い風属性であるせいなのか動きがとんでもなく早い。
ゲイルは俺を吹き飛ばすとその場から離れ、素早く流牙に接近。
接近に対応しきれていない流牙は背後に回り込まれ、急所を打ち付けてその場に倒れた。

「流牙!」

しまった、これで閑凪をゲイルから守れるのはいない。
間に合わないと思いつつも俺はその場を駆け出したが、やはりゲイルの方が早い。
それを悟ったのか閑凪はソファを飛び越えて硝子片が飛び散ったままの事務机の方へ移動。
傍に立てかけてあった愛用の杖を手にすると、すぐさま突進してくるゲイル目掛けて駆け出す。

「いい加減にしろクソ兄貴!!」

杖を大きく振りかぶり、すれ違い様にスイングされた杖はゲイルの顔面にクリティカルヒット。
閑凪の一撃でようやくゲイルは沈黙した。





俺と流牙は手分けして割れた窓硝子を片付けていた。
イリスがレイヴンに指示を出してくれたお陰で、レイヴンも手伝ってくれている。
破片を一つ残らずかき集めれば何とか直せそうだ。

「ど、どうぞ」
「ああ、ありがとうイリスちゃん」

ゲイルに茶を出すイリス。
ソファに座ってやたら朗らかに茶を啜るゲイルだが、その姿は来た時よりもボロッボロになっていた。
何よりも眉のすぐ上に横一直線に走った赤い痕が緑の髪に目立つ。

ゲイルは閑凪が関わると異常なほど頭に血が上るタイプだ。
俺も戦闘に熱中すると頭に血が上るが、コレとは別物だと信じたい。
ある意味コイツも帝国兵並に厄介な相手だ。

「で、今日は何の用なのさ?」

テーブルを挟んで反対側のソファに座っている閑凪の顔は怒りを表している。
似たような顔で全く反対の表情をしているのだから見ていて奇妙だ。

「えへ。ナギの顔が見たくなったから来ただけって言ったら?」
「身包み剥いだ後、兄弟の縁切ってから締め出す」
「わー!ウソウソ!冗談だよ冗談!だからそんなに怒らないでよナギ!」

茶を置き、やたらヘコヘコして閑凪の機嫌を取ろうとするゲイルの姿はもう見慣れた。
でも顔見に来た以外でゲイルが来るのは珍しいな。

「ならとっとと用件に入ってよ。僕達これから仕事なんだけど」

この時間帯は紅茶でも啜りながら新聞でも読んでる頃で何もしてねェじゃねぇか。などというツッコミは胸の内に封印。
俺達にとってもまずはゲイルに帰ってもらわない事には仕事に向かえない。
もしも先に俺や流牙がいなくなったらゲイルは堂々と閑凪を拉致しかねない。
あんなのだが所長にいなくなられるとこの事務所がろくに機能しなくなるのも事実だ。

「じゃあ、その用件なんだけど」
「……」
「イリスちゃん貰…うわおっ!?」

台詞を言い切らない内にゲイルは俺達の方へ風で防御壁を張る。
一体何事かと思ったんだが、次の瞬間には幾つかの硝子片が防御壁に突き刺さっていた。
瞬時にその原因を悟った俺はすぐ傍にいたはずのレイヴンの姿を探すが何処にもない。

そしてゲイルの方から硝子が砕ける音がした為、振り返ってみるとそこにレイヴンがいた。
ただしいつものように立ち尽くしているのではなく、硝子片片手に鬼気迫る勢いでゲイルを突き刺そうとしていた。
素早さでなんとか捌いている辺りゲイルもゲイルだが、レイヴンもイリスが絡むと冗談が全く通じない。
まあ魔法使っていたり剣取り出したりしている訳ではないから、レイヴンも頭では分かってるんだと思う。
そうこうしている内に、ゲイルがレイヴンの手首を掴んだ。レイヴンは無心の表情のまま力を込めるがゲイルの方も手を放せば殺されかねないと分かっているのか均衡を保ったまま手を放さない。

「………」
「あっはっはっはっは、やっぱ君だけは流石のオレでもおちょくるのに勇気いるあいでっ!」

笑い声すら零すゲイルに閑凪の杖が再び唸った。
今度は先程のように全力ではないだろうけれど、それでも相手がゲイルだと言うだけで通常の倍は威力があるだろう。
溜息を一つ付くとゲイルは真剣な顔つきになる。ようやく真面目になってくれたか。

「……実は共和国の方に行きたくてね。でも国境の辺りに賊がいるとかで困ってるんだ」

その話に俺は今朝言い渡された仕事の一つを思い出す。
別にどうって事ないかとも思ったが、ゲイルがその件で此処に来るなんて事は相当厄介な連中なんだろうか。

「ゲイル兄さん程の実力なら、賊の一個や二個なんてどうって事ないんじゃないの?」
「うん、オレとしても別に襲われたら逆に殲滅して金品全部奪ってからリーダーの生首でも役所に突き出して報酬せしめればいいかと思ったんだけどねぇ……」

俺より思考がえぐいぞ。

「仲間の一人が『品物が盗まれたら大変だ!』って事でちょっと偵察してみたんだけど、どうやら普通の盗賊団じゃないみたいなんだ」
「普通じゃない?」
「見張りにオーガやトロルが居た。恐らく魔物使いが混じってるね」

そしてゲイルは火炎竜を見かけたらしい。
風属性は相当極めていない限り火と相性が悪い。
有翼人種であるゲイルだが、普段接近戦ばかりで魔法の鍛錬はしていないので威力はあっても精度はない。
純粋な魔法戦となれば俺や閑凪の方が余裕で勝てるくらいゲイルの魔法はバリエーションがない。

「ゲイル、その件だったら俺が受け持ってるぜ」
「本当かい紅煉ちゃん?」
「ち、ちゃん付けは止めてくれって何度言えば……ともかく、本当だ」

三週間以内と言われていたから数日くらい放って置いてもいいかと思ったが、ゲイルが直に頼みに来る。しかも魔物使いなんて者がいるとなれば話は別だ。
国境は俺の狩場である青の森が近い。つまり腕に覚えのある魔物使いなら森からいくらでも魔物を呼び寄せる事が出来るのだ。

「何なら今すぐ発ってもいいぜ。魔物相手なら話は別だ」

こんな面白そうな依頼だとは思わなかった。
火炎馬を先にやろうかとおもったがこっちを先にしよう。竜の相手なんて何ヶ月ぶりだろうか。
今から気分が上がっている俺に、ゲイルはニッコリ微笑んで頷いた。

「ナギ、紅煉借りてくけどいいかい?」
「いいも何も、紅煉の仕事なんだから仕方ないじゃないか」

半分呆れ気味に言う閑凪。
閑凪はとにかくゲイルと関わる事を嫌う為、早く出て行って欲しいというような感じだ。
俺も何度かゲイルと行動を共にした事があるが、本気で閑凪さえ絡まなければちょっと性格の悪い冒険者といった感じだ。

「じゃあ、もうお別れだけどちゃんと規則正しい生活するんだよ?夜はお腹出して寝たりしたらダメだよ今の時期は冷えやすいからね。オレがいなくなっても元気でいてね。それから好き嫌いなんかしたらダメだからね、ただでさえ小さいのにもっと小さくなりかねないんだから。ああ、オトモダチの皆と喧嘩しないよう仲良くするんだよ?ナギはちょっと他人を見下し気味な態度だから喧嘩になりやすいんだよ。まあソレもソレでナギらしくて可愛いけ……」
「いいから早く逝け!!!」

相変わらずの過保護っぷりを発揮しつつ、ゲイルは事務所から蹴り出された。
 

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HN:
鴉羽 らいと
性別:
非公開
自己紹介:
絵も描ける物書きになりたいともがいてる奴。
仕事もそっちのけで日々創作。

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