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土壇場ネタ帳。 一次も有れば二次も有。
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紅煉が閑凪に仕事で飛ばされた話。
戦闘シーンが書きたかったのと、二人が知り合いだったら面白そうとおもった。


それは俺が単独で北方領土を目指した頃の話。

珍しく遠くから仕事の話が舞い込んだかと思いきや、あの腹黒所長……もとい閑凪は俺一人で行って来いとか言いやがった。

北方領土は四つに分かれていて、それぞれ蒼雅、白孤、翠蓮、緋燕という領土名が付いていた。
その内、蒼雅領だけは軍にいた頃任務で何度か行った事はあるが、他は全く知らない地だ。
必要最低限の情報と荷物だけ俺に渡すととっとと行って来いと言わんばかりに事務所から追い出された。

「あんにゃろ……今度こそ叩ッ斬ってやる」

今まで何だかんだでやり損ねていた閑凪を仕留める計画。
状況が状況だけに思わず呟くが、それは吹雪によって掻き消された。

今俺がいるのは白孤領。北方領土で最も寒く、万年雪に覆われた地だ。
一年の半分以上が氷点下である為、生えている草木は全部寒さに耐性を持つものばかり。
ここら一帯には結露樹と呼ばれる表面が氷で覆われた木が生えている。
多分これでも林か森なんだと思う。


吹雪は止む気配を見せず、俺はただ黙々と指定された場所へと向かっていた。
森の中を進んでいるとは言え、葉をつけていない木々は風除けにもならない。
寧ろ結露樹自体が冷気を孕んでいる為、吹雪を避けようと近付くだけで一層寒い。


きっと皆の中で俺が一番寒さに体勢があるからとかそういう理由だろうとは思うが、幾らなんでも防寒具がマフラー一つってのは酷くないか?
次に寒さに強いのは水の属性を持つ流牙だが、流牙の場合この吹雪の中でもはしゃぎ回り、最終的に氷付けで発見されるのがオチだ。

何処に行こうが顔色一つ変えないレイヴンを連れて来ればよかったか、とも思ったが、アレは期待しないほうがいい。例え来たとしても黙ってるだけでロクな仕事をしない。
それに、レイヴンを連れるならイリスがいなければならないが、イリスがこんなトコに来たら即凍死したっておかしくない。
だったら依頼を引き受けた閑凪本人が来たって良かったんじゃ……とか思いもしたが、アイツがこんな悪環境の地にわざわざ足を運ぶとは思えない。

正直この依頼とやらは片道だけでも随分な値だ。
事務所からここまでは船で三日かかり、更に三日はは歩き続けている。
食費やら交通費を考えると、この依頼がよっぽど報酬が良かったのか、あるいは俺達に何か関係のある依頼なのか……

「貴様、其処で何をしている?」

思考に耽っていると急に声を掛けられた。いつの間にか下がっていた視界を上げる。
吹雪の向こう、結露樹も無く開けた所に佇む男がいた。黒く長い髪と着流した衣服が吹雪の中舞っている。
着ている衣服は北方領土独特の物だと判断できるが、どう見ても防寒着の類は見えない。つーか焔を使える俺でさえ寒いと言うのに奴は寒くないのか?

色々と疑問が脳裏に浮かぶ中。男の腕が上げられる。
その手には身の丈くらいはありそうなほど長い刀が握られていた。

「再度問う。この白孤の地で何をしている?」

どうやら地元人のようだが、その様子は歓迎しているようには見えない。
まあ、ある意味歓迎っぽいけど? 寧ろ俺はこう言う歓迎も大好きだ。
俺は荷物をその辺に放り、愛刀を手に取った。飾り布が吹雪にはためく。

「ほう? この俺相手に武器を取るか?」
「見た感じただの強盗って訳じゃなさそうだしな」

男の放つ殺気は一般人のそれじゃない。
俺と同様、人を斬る事に躊躇いを持たず強者を求める者のそれだ。
そんなのが二人揃っているのだ。やるとしたら……

「面白い。久方振りの強者と見た」

当然、斬り合いしかない。
男は長刀を上段に構え、俺は愛刀を鞘から抜く。

「俺の名は刃柴迅。貴様は?」
「紅煉・D・アスカレイド」

吹雪の中、俺と男……迅が対峙する。
互いに刀を構え、微動だにしない。微かにでも動けば斬り合いが始まる。
その一瞬のスリル感に歓喜が頭を擡げる。そして。

「……フッ!」
「ハァッ!!」

ほぼ同時に堰を切った。
翻る二つの刀が銀世界に火花を散らし、刃鳴り散らす度に互いの士気が昂揚する。

長刀のデメリットはその長さ。
接近戦に持ち込まれると防御行動をする事が困難になり、更に刺突には向かないから相手を仕留めるとすれば必然的に斬撃となる。
勿論刀身が大きいゆえに攻撃力も高いが、懐に潜り込めば俺の勝利は決まる。

だが、接近しかけたところで長大な一振りに阻まれ、髪を数本斬られた。
弱点と分かっていて相手が接近を許す訳が無い。俺が防御しきれない程の強い一振りは近くにあった結露樹を容易く切り裂いた。

切り裂かれた結露樹は砕け、周囲に氷の礫を散らす。
予想外の攻撃に身を翻し之を避けるが、俺の体勢が崩れると予測していたのだろう迅は幾重もの刺突を繰り出す。
長刀とはいえ刺突の威力だけは普通の刀と変わらない。どちらかと言えば長刀の方が狙いを定め難いのだが、迅は正確に人体の急所を狙って刺突を繰り出す。
氷の礫を切り裂き、あるいは弾き飛ばすがそこに刺突が加わっては流石の俺でも防戦一方だ。
地の利が迅にある以上、どうしても俺は不利になる。

「どうした異国の剣士。その程度か?」

ほくそえむ迅。だが俺の足を止める礫は永遠に降り続けるものではない。
俺は礫が止むと同時にその場を駆け抜け、間合いを開ける。

近付こうとすれば横薙ぎの太刀筋それを阻む。だとしたら……俺が取る行動は一つ。
俺は構えを直すと下段に構え、迅目掛けて駆けた。

「血迷ったか!!」

普通、この場で真正面から突っ込むなんて正気の沙汰じゃない。
だがあの長刀を突破するには相手の裏をかく必要がある。
突っ込んでくる俺に迅は長刀を腰溜めに構え、横薙ぎの一閃を放つ……今だ!

「いいいぇあああああぁぁッ!!!」

首の真横で刀を垂直に構え、迅の太刀を防ぐ。そして俺は刀の刃と鍔で迅の刃を受け止め、そのまま滑り込むかのように突き進んだ。
間近で散る火花に軽い火傷を負いそうになるが、構わず進んだ。微かにでも迷えば均衡を崩して俺の腕が飛ぶ。

それにこの方法は賭けに等しい。
迅の懐に辿り着くまで俺の愛刀が持たなければ俺はその瞬間首を刎ねられる。
懐に辿り着いたなら例え刃が折れようとどうにでもなる。

この行動は想定していなかったのか、迅の眼が見開かれる。
だがこれで懐へと入る事は出来た。後は一気に切り崩すのみ……

「まだだッ!!」

俺の顎を目掛けて迅の蹴りが放たれる。
思わず体制を崩し、雪原に倒れ込むかのように避けた。

侮った。獲物は長刀だけかと思ったがこの男体術の心得もあるようだ。
あのまま避けずに突っ込んでいたら顎を砕かれていたかもしれない。
中距離では長刀。近接では体術を繰り出す迅。ここまで小回りを聞かせるとは思いもしなかった。

この迅とか言う男、相当の切れ者と見た。
最近魔物ばかりで退屈していた俺に火が付く……

「コラー!迅ーッ!!」

俺と迅の殺し合いを中断させたのは女だった。
歳は迅と同じか少し下に見える。黒のショートカットに狩衣姿の女はずかずかと迅へと走り寄る。

「あれほど出会い頭に刀振り回すのはやめろって言っただろ!?何度言わせる気だ!」

人差し指を突き出し、言い聞かせるかのように叫ぶ女。
見知った奴なのか迅の方もウンザリとした表情を浮かべている。

「……チッ、煩い奴が来た」
「何か言った?」
「フン」

迅の呟きが聞こえたのか女はギロリと睨む。
先程の戦いの最中とは違う得体の知れない恐怖感が女から滲み出る。
腰に手を当てて女は溜息を一つ付いた。

「まったく迅はすぐに喧嘩するんだから……コイツが粗相してゴメンね。何処か怪我したとかある?」
「……いや、特にねェけど」

どっちかっつーとイイ所で水を差したテメェを切り刻みたい。
だが相手に悪意は無くあくまでも善意による行動だろう。

「ところで君が紅煉さん、だよね?」
「あ? そーだけどアンタは?」
「僕は刃柴李紅。閑凪に依頼した奴だよ」

ああ、より一層切り刻む訳には行かなくなった。

 

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鴉羽 らいと
性別:
非公開
自己紹介:
絵も描ける物書きになりたいともがいてる奴。
仕事もそっちのけで日々創作。

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土壇場作成故、話の流れ、繋がりなど全く持って皆無です。
誤字脱字多いかと思われますが広い心でスルーしてやって下さい。
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