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土壇場ネタ帳。 一次も有れば二次も有。
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本日、祖母の家にいる飼い犬が亡くなったそうです。
ふた月程前、私が来る前にも食事を受け付けなくなってしまいもう駄目かと思われたのですが、私が帰って来た途端元気になってきていたのだとか。
それでも毛並みが悪くなっていたり喘息になっていたりできものが出来ていたりしたので、長くはないと誰もが思ってました。

ちなみに祖母の家の犬は代々同じ名です。
私と一番仲が良かったのは先代の女の子。とても臆病で、よく私の後ろを着いてきていました。
私と生まれ年も同じだったのでホント一緒に育った子でした。私が小1の時に他界しました。

今回の子は力が強くてすごく喧嘩早い男の子で、慣れた人には甘えん坊でした。
先代と違って大きくなりそうだった為外飼いにしようとしたのですが、最初は祖母から離れなかったそうです。
弟が生まれてから来たので、多分14歳かそのくらいですね

朝、狸寝入りしていたら誰かが倒れた的な電話が来ていたようで。
聞き耳立てて、まさかばあちゃんかな?と思ったりしてたら「できもの」なんて言うからすぐわかりました。
お陰で朝布団から出て来れなくなりましたよ。泣いてて。



からん。

鐘が、鳴る。


彼と私はいつも傍にいた。
いつも、と言っても、そこへ帰ればの話だ。年中傍にいた訳ではない。

彼が好きだったのは散歩。
いつも紐で繋がれて一定範囲以外歩けない彼を、私は帰って来ると必ず散歩に連れて行った。
彼もそれがわかっていたようで、私が帰るとひとしきり甘えた後、散歩に連れて行けとよくせがんだ。
最初の頃は私の方が力が弱く、彼と散歩にいくのはとても大変だった。
一度思い切り引っ張られた時に転んでしまい、その拍子に彼に置いて行かれてしまった事もある。
時が経つに連れて私にも力が付くと、二人揃って野山を駆けた。

いつだったか。彼がひと月近く帰ってこない時があった。
確か彼を繋いでいた紐が解けてしまった事が原因だったか。探しに行こうにも彼の行動範囲は広く、そして私がいける場所など限られていた。
幸いな事にここらの山は水も食料も豊富だ。何処かで餓死すると言う事はないだろうがとても心配した。
私は都合で帰ってしまったが、ひと月経って彼は何食わぬ顔で帰って来たと連絡を受けた。
近所の犬は遭難して、後日用水路で見つかったと聞いた事もあっただけにとても安心した。

そんな彼が事故で足を折ってしまった事があった。
普段、伯父になんて連れて行かない伯父だったが、流石に連れて行った。
実は随分前に軽く車に撥ねられた子がいたのだが、伯父が病院に連れて行かずに居たら死んでしまった事があった。
数日の入院生活を送った彼は、足の骨に鉄骨を埋めて帰ってきた。
足には縫合の跡があったけれど、その後も彼は元気に跳ね回っていた。

彼はカラスや猫をみると凄い剣幕で追い払おうとしていた。
彼が煩いから、という理由で私もカラスや猫に石を投げていたりする時期があった。
と言っても、幼い私の手で届く範囲なんてたかが知れている。避ける素振りすら見せず悠々と居るカラスと猫は彼がめいいっぱい叫んだ後、何処かへ行くのだった。

力一杯野山を駆けていた彼は、今では敷地内を歩く程度の体力になってしまった。
紐を引き千切らんばかりの力だったのに、今では結び目が緩くても解ける事は無い。
猫やカラスをあれだけ追い払おうとしていたのに、今では近くに居る事すら分からなくなっていた。
ほんの少し動いただけでも、すぐに咳き込むようになった。


そして今日、私に連絡が来た。


からん

追悼の鐘が鳴る。頭の中で鳴り響く。
いいや鐘なんて鳴っていない。そもそもここらには鐘がない。
鐘なんてどこにある―――


死因は、恐らく老衰。

病院に連れて行った訳でもないので、詳しい事は分からないが恐らくそうだろう。
私が幼い時は彼の方が年下だったのに、いつのまにか追い越されていた。

彼の一番傍にいた伯父達は泣かない。
親も泣かない。兄弟も泣かない。

泣いているのは、私だけ。

大の大人が泣くなと誰かが言う。
大人が泣いては駄目だと誰が決めたのか。

職業柄、死体はそれこそ掃いて捨てるほど見ているというのに。
死体を集めて来る事だって、物心付く前からやっていたせいか今では手袋すら付けずに出来る。
腐っていても、腐臭を放っていても、ミイラとなり骨と皮だけの死体を見てももう平気になっている。

彼らを見ても平気なのに、見てもいない彼の死に涙するのは想いの差。
何処かで誰かが死んでも直接的な関係があれば死を悼み、なければ何とも思わないのと同じだ。

私が次に帰る事が出来るのは三日後。
それまでには彼の遺体は綺麗に片付けられている事だろう。
彼は今までの子達と同じく、恐らく私には埋葬された場所すら教えられない……いや、もしかしたら墓自体ないのかもしれない。
人は死ねば墓を設けられるというのに、何故彼等はただ埋められるだけなのか。

だが同じ点もある。
最初こそは泣き明かすが、最終的にはただの思い出になってしまう事。


からん


泣き腫らした目が痛い。頭も痛い。
心臓がやたらと早鐘を打ち、そして呼吸も一定ではない。
たまに深呼吸をして落ち着かせようと試みるが、すぐにぶり返す。


昔、霊感のある友人が、私の肩に小さな霊魂が留まっていると言っていた事があった。
その日は我が家に居たハムスターが死んだ直後で、恐らくそれだったのだろう。

もしかしたら、私には見えないが、彼も今隣に居るのだろうか。
いるのだとしたら泣いてなどいられない。彼に心配などかけたくはない。

私が彼にできる事。
忘れない事。14年も前に死んだ彼女の事だって鮮明に覚えているのだ。できなくはない。
泣かない事。彼の前で私は一度も泣いた事が無いのだから、泣くのはこれっきりだ。

愛し君へ、ありがとうとさようならを。
そして感謝の言葉を。気持ちを。

恐らく、数ヶ月もしない内に新たな子がやって来るだろう。
彼の居場所が空いている間、きっと私は物足りない気分になっているだろう。
そして彼と同じ名の子を彼と同じく愛そう。


からん……

鐘が鳴る。鐘が止む。






Image026.jpg
2007/06/30のもの。


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鴉羽 らいと
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自己紹介:
絵も描ける物書きになりたいともがいてる奴。
仕事もそっちのけで日々創作。

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土壇場作成故、話の流れ、繋がりなど全く持って皆無です。
誤字脱字多いかと思われますが広い心でスルーしてやって下さい。
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